幼馴染みの期限
ケーキの美味しさにニヤニヤしていると肩をちょん、と小突かれた。
えっ?と隣に視線を向けると呆れ顔の向井くんと目が合った。
「渡瀬……今俺が隣にいること忘れてたでしょ?」
「うん、忘れてたかも」
きっぱりと言い切ると、向井くんは声をたてて笑った。
「渡瀬も結構キツいよな。俺がからかって意地悪したから?昔からこんな感じだったっけ?」
あ、やっぱり意地悪してる自覚があったんだね。
向井くんの意地悪発言にムッとしたところで、彼は私に思いもよらない言葉を放った。
「まぁ、これくらいの意地悪は許してよ。もう10年も前の話だけど……男が昔振られた相手に普通に話かけるのって結構勇気いるんだからさ」
「……うっ」
驚いた拍子に口からケーキが飛び出しそうになって、慌てて口元を押さえてゴクンと飲み込んだ。
「……もしかして渡瀬……俺を振ったこと、忘れてた?」
驚き過ぎて声も出せない私を見て、何を勘違いしたのか向井くんはちょっと悲しそうな表情で苦笑いをした。