幼馴染みの期限

***


街コンが終わって家路に就く途中でも、さっきの向井くんとの会話が頭の中をグルグルと回っていた。


「渡瀬、送るよ」


向井くんはそう言ってくれたけど断った。

しばらく一人でゆっくりと考えたかったし、向井くんと一緒に家までの道程を歩くのは辛すぎたから。



駅前商店街を抜け、コンビニを通りすぎ、住宅地へと続く緩やかな坂道を上る。


いつもと変わらない景色。



10年前のあの日だって………こうして同じ景色を見ながら帰ったから、嫌でもあの時の気持ちを思い出してしまうんだ。


***


「あ、おかえり樹里。どうだったの街コンは?」

家に帰り着くなり母にそう声をかけられた。


母の口から『街コン』という単語が出てきたことに驚く。街コンを知ってるなんてやるな、里子(さとこ)


ん?……って言うか、あたし今日街コンに行くなんて一言も言ってないよね?


「ちょっと、どうして私が街コンに行ったって知って……」


そこまで口にして、はっ!と思い当たった。


「おかーさん!あたしちょっと広海んとこ行ってくるね!!」


「せいかーい!」と呑気に笑いながら言った母の声を背中に受けながら、私は家を飛び出した。
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