幼馴染みの期限
どうして今……私は、向井くんとのことを広海に話したくないと思っているんだろう。
街コンで偶然同級生に会った。ただそれだけのことだ。だけど、広海には知られたくない。
広海に何か話があるんじゃないか?と促されているのに、先程までの向井くんとの事を、目の前の幼馴染みに伝えるべきかどうか悩んでいる。
サラッと言っちゃえばいい。そう思う自分となぜか躊躇う自分。
「てっきり街コンの成果でも話しに来たのかと思ったけど。……ん?何だ?今回はいい男がいなかったのか?」
黙ったままの私を見て広海は笑いながら話しかけてきたけど、なぜかその手は私の頭を撫でている。
いつも広海に聞かれると……いや、聞かれないうちにペラペラと『運命の人を見つけたの!』なんて言っていたのに。
「それとも運命の人に出逢ったのか?」
今まで毎回毎回恋に落ちるごとに運命の人と言っている私を、広海はいつもバカにしてきた。
だけど今の広海の口調にはからかっている様子はひとつも無くて、それが何だか落ち着かない。
でも、向井くんはある意味運命の人なのかもしれない。10年ぶりに再会した初恋の人なのだから。