幼馴染みの期限
時間が経てば経つほど返しにくくなるのは分かってる。
既読付いちゃってるし。
このままでは、私は既読スルーをしているだけの失礼な女だ。
うーん、うーんと唸っていると、いきなり背後から手が現れてスマホが奪われた。
「あっ!」
「お前さぁ……さっきから何見て唸ってるんだ?煩くて眠れねぇよ」
「こんなとこで眠ろうとするヤツがおかしいの!……ちょっと、スマホ返してよ」
休憩所の和室は四畳半ほどの広さしかない。職員は交代で休憩を取るし、外に食べに行く人も多いから、そんなに狭さを感じることはないんだけど……
だからと言って堂々と寝転がって休憩する人なんて、広海くらいだ。
返せ!とスマホに手を伸ばす私をからかうように頭上高くスマホを掲げニヤニヤと笑っている。
「『渡瀬、土曜日空いてる?』だって?……このケイってヤツが、お前の今月の運命の人か?」
「きゃあ!勝手に見ないでよ!今月って何よ!バカにして!!……くっ!」
必死にスマホを取り戻そうと背伸びする私を見て、ヤツはさらにスマホを上へと上げた。
広海と私の身長差は20センチ以上。届く訳がない……でも、これ以上LINEを見られてはマズイ。
「返してっ、返してよ!……ぬぅぅぅー!!」
つま先立ちも限界で足がプルプルと震え出す。
「色気のない声だなー。そんなんじゃ、ケイに嫌われるぞ」