幼馴染みの期限
名前を呼ばれてドキリとしたけど、変わらず広海はニヤリと笑っていて、ケイが向井くんだっていう事には気がついていないようだった。
向井くんがフルネームで登録してなくて良かった……とホッと胸を撫で下ろす。
フルネームで無ければ広海も気がつかないはずだ。向井くんは高校へ進学する直前、他県へと引っ越した。
よっぽど親しかった人で無ければ、羽浦市に戻って来たことは知らないはずだ。
実際私も土曜日に会ってとても驚いたんだから。
「……んっ?樹里、お前これ昨日のメッセージだろ。何で今まで放っておいたんだ?」
盗み見しているうちに、余計な事まで気がついてしまったらしい。そう言うと広海はスマホを掲げたままで何やら打ち始めた。
「ちょ、ちょっと!何してるの?!」
「『返事、遅くなってごめんね。土曜日?もちろん空いてるよ!』っと。よし、完璧」
「ちょっとぉー!何勝手に返事してるのよ!!しかもスタンプまで!!」
返信の下には、背中に羽根の付いたウサギが『OK』と言いながら陽気に親指を立てているスタンプまで、しっかりと押されていた。
「ま、知り合ったばっかりだし。相手がどういう気か分からないんだから、よっぽど怪しいヤツじゃなきゃ乗っかるのが一番だろ」