幼馴染みの期限

……知り合ったばっかじゃないんだよ。


がっくりと肩を落としながら心の中で呟いた。


どうしようかと悩んでいるうちに、広海に陽気な返信をされてしまった。


楽しみにしてるって勘違いされても……困る。



「何でがっかりしてんだよ。お前、街コン行ってから何かおかしいよな。……俺にも報告ねぇし」



今までは合コンが終わった途端に広海に電話をしていた私が今回は何も言わないのだ。確かに不自然だし、おかしいと思われても仕方ない。



だけど、その感情を自分でも説明することができないんだからどうしようもないじゃないか。



おまけに、宏美さんからこの週末中何度もLINEや着信が入ってきていた。



同級生だと説明はしたけど……二人っきりで移動したし、『広海には言わないでください』とLINEを送ってしまったから、ただの同級生だとは思っていないだろう。


そのうちきちんと話さないといけないけど、まだ向井くんとのことを話す気持ちにはなれない。


純粋に自分の恋を応援してくれる宏美さんに、少しだけ後ろめたい気持ちになっていた。



だけど……後ろめたいのは宏美さんにだけで、目の前のこの男には説明する必要も無いし義理もない。



「当たり前でしょ?!何でいちいち広海に報告しなきゃいけないのよ。ほら、もうスマホ返して!」


ほらほら、と詰め寄りながら広海に向かって手を広げる。


「分かったよ……ほら」


スマホが私の手に戻るその瞬間、


『ピンポーン』


と着信の音が鳴ってメッセージが映し出された。


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