幼馴染みの期限

「源さんは、ここの常連さんなんですね」


「ああ。ここのコーヒーは、かふぇよりうまいからね」


そう言って向こうの通りを指差す。大通りを挟んで向かい側に『felicita』が見えた。


「ところで……今の彼を見て樹里ちゃん何とも思わなかったのかい?」


「……へっ?」


「ほんとにおかしいねえ。あのイケメンちゃんを見ても樹里ちゃんが何にも反応しないなんて。ここにはよく来るのかい?」


「いいえ。あっちの……家に近いほうが行きやすいので、ここにはあまり来ないですけど」


ひそひそと声を潜めて話ながら、レジに戻った店員さんの顔を見る。……うん。ちょっと背は低いけど、確かに超絶格好いいヒトかも。


「源さん、ひょっとして……あの方を紹介しようとしてくれました?!」


これはもしかして、また私は素敵な出逢いというものをスルーしそうになっているのか?


慌てて源さんに確認すると、「いーや。彼にはカワイイ奥さんがいるからね」とあっさりと返された。


……結婚してるんかーい!


ん?じゃあ、源さんは一体何が言いたいの?



「渡瀬、お待たせ……って、あれ?」


源さんの言動が読めずに考え込んでいたところに、いつの間にか向井くんが来ていて声をかけられた。

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