幼馴染みの期限

待ち合わせをしていた女(ヒト)が、じーさんとコーヒーブレイク中という不思議な光景を見て、彼は思いっきり戸惑っている。


「この人は、うちのデイサービスを利用してる田原源次さん。偶然会って、待ってる間相手してもらってたんだ」


そう説明すると、向井くんは人懐こい笑顔を浮かべて源さんに挨拶をした。


「こんにちは。向井と言います。渡瀬さんとは中学の時の同級生なんです」


「ってことは、広海ちゃんとも同級生かい?」


「……ヒロミちゃん?……あぁ、沖田か。……そうです。沖田とも同級生です」


「向井ちゃんは……樹里ちゃんのコレかい?」


源さんが親指を立ててイヒヒ、と笑う。


親指の意味がよく分からなくて向井くんのほうを見たら、向井くんは「これからですけどね」と言って源さんと同じような顔で笑っていた。


そのまま、私達は源さんと別れて店の外へ出た。


「この前のワンピースも可愛かったけど、今日の服も可愛いな。でも私服で会うのって何か変な感じだよね」

さらっと可愛いと言われたのが恥ずかしくて、真っ赤になりそうな顔をうつ向いてごまかした。


「お互い学生服のイメージしかないもんね」


この前の服はモノトーンで何となく学生の頃を思い出したけど、今日の向井くんは明るい色合いのキャメルカラーのチェスターコートにスキニーパンツを合わせていた。


「ねぇ渡瀬」


「何?向井くん」


「映画を見るのと、ちょっと遠出して水族館に行くのとどっちがいい?」


「うーん……水族館がいいな。リニューアルしてから行ったこと無かったんだよね。2年前だっけ?リニューアルしたの」
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