幼馴染みの期限
「今日は俺が運転手なんだから、渡瀬はのんびりしていいよ」
「あ、寝ちゃってもいいよ。渡瀬の寝顔見ながら運転するのも楽しそうだし」
冗談か本気か分からない言葉を言ってくくっと笑った向井くんは、源さんに向かって笑った時と同じ顔をしていた。
***
水族館は駅前から一時間ほどかかる場所にある。今日は土曜日ということもあって、多くの人で賑わっていた。
中に入るとはぐれないようにと、また自然に手を繋がれた。
水族館に来るのは、小学生の頃に私の家族と広海と一緒に来た時以来だ。
共働きの広海の両親は土日も仕事で家族が揃わないことも多く、小さい頃は広海もうちの家族のように一緒に出掛けていた。
昔はこんなに大きな水槽も無かったし、白熊もペンギンだって居なかった。
広海は途中で飽きちゃって……館内を走り回ってうちのお母さんが追いかけ回してたっけなぁ。
あ、そう言えばどんな魚を見ても「うまそー」「食いてー」って言ってたような気がする。
思い出してフフッと笑った私に「どしたの?何か面白い魚でもいた?」と向井くんが聞いてきた。
「ううん。何だか、ずいぶん立派な建物になっちゃったんだなぁって思ってた」