幼馴染みの期限
「だよね。俺もリニューアルしてから見るの初めてなんだ。」
天井まで届くほどの巨大な水槽を眺めながら奥へと進むと、水槽のトンネルが現れた。頭上を横切る大きな魚に子ども達が歓声を上げていた。
家族連ればかりかと思ったら、カップルの姿も結構多い。思わずキョロキョロと見回していたみたいで、向井くんに見つかってしまった。
「他の人ばっかり見てないで、俺のほう見てよ。ほら、ここに立ってみて。向こうから写してあげるよ」
向井くんが連れて来たのはクラゲの水槽だった。柱の中に水槽が埋め込まれていて、水槽の中は7色にライトアップされている。幻想的な雰囲気の水槽に、色とりどりのクラゲが漂っているように見えた。
「凄い、綺麗!」と感激して、水槽の向こう側に回って向井くんに手を振ると「渡瀬、はしゃぎすぎ」と笑われてしまった。
「ごめんね、子どもみたいにはしゃいで……」
「ん、いーよ。喜んでもらえると嬉しいし。まぁ……こんな感じだと、水槽ごしに見つめ合うっていう想像をしてたんだけどね。ロミオとジュリエットみたいに。……知らない?映画の」
「ごめんね。あまり映画は見ないから……ロミオとジュリエット?話は知ってるけど……映画は違うの?」
「うん。ちょっと違う。現代版にアレンジされてるんだ。二人が出会うシーンはね……こんな風に水槽ごしに見つめ合って、その瞬間に恋に落ちるんだ」