幼馴染みの期限

じっと見つめられて恥ずかしさで頬が熱くなる。

「……樹里は簡単には恋に落ちてくれないな。名前は似てるのにね」


「えっ……と、向井くん……?」


これは、夢でも妄想でも無く現実だ。


だけど、ずいぶんと自分にとって都合のいい現実だから……何を話していいのか分からなくなってしまう。


「俺が……ロミだったら……違ってたのかな」


向井くんの呟きは、動揺した私の耳にはよく聞こえなかった。


黙ってしまった私を見て、向井くんは軽くため息をついた。


そして「あ、白熊見に行こっか。もうちょっとでエサの時間みたいだよ」とパンフレットを見ながら、向井くんは何事もなかったように歩き出した。


それからは特に何を言われる事も無く、二人で館内を見て回った。


だけど、最初は手を添えるようにして繋がれていたその手は、指を絡めるように繋ぎ直されてしまって……


それが何だかたまらなく恥ずかしいことをされているようで、私はずっと緊張しながら歩いていた。


***

駅前に戻る途中、繁華街に程近いレストランで食事をした。


わざわざ予約をしてくれたというそのお店は煉瓦作りの外観がお洒落で、本格的なレストランに入った事のない私でも安心して食事を楽しむことができるような、アットホームな雰囲気のお店だった。
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