幼馴染みの期限
「向井くん、素敵なお店知ってるんだね」
「ほんと?……実は俺もここに来るの始めてなんだよね。渡瀬にデートをオッケーしてもらってから詳しいヤツに聞いたりしてさ。……って慣れてるフリしようと思ったけど、ばらしちゃった。渡瀬は普段どういうとこに行くの?」
わざわざ調べてくれたのも、それを素直に教えてくれたのも向井くんらしいなと思った。
「就職してからは居酒屋が多いかな。お洒落な所なんて知らないしね。酔って、騒いで、みんなで仕事の愚痴言ってばっかりだよ」
「渡瀬も愚痴るの?何だか想像つかないな。今日だって飲んでもいいけど?渡瀬のブラックなとこ見てみたいから」
いつもは、みんなでふらふらになるまで酔って、騒いで、広海とはぎゃんぎゃん言い争いながら飲んでいる。どうやら私は酒癖も悪いみたいだし……
そんな恥ずかしい姿、向井くんには絶対見られたくないよ。
「こんな素敵な所じゃ酔えないよ。もう、恥ずかしいな。向井くんの中の私ってどんなイメージなの?腹黒いって感じ?」
「違うよ。渡瀬は……そうだな、白って感じ。いつも真っ直ぐで、困ってる人をほっとけなくて。ちょっとお人好しなとこもあるけど……」
次に続く言葉は何となく予想ができた。
……質問を間違えてしまったような気がする。
「そんな所が好きだったんだよ」