幼馴染みの期限
「今日一日一緒に過ごして、やっぱり渡瀬は変わってないなって思ったよ。あの時は振られたし、羽浦も離れる事になったから無理矢理諦めたけど……」
「やっぱり俺、渡瀬のこと好きだよ。ずっと忘れられなかった」
始めてLINEが来た夜に、こんな風に向井くんに『好きだ』と言われた夢を見た。
今日みたいに手を繋いで、デートしたりしている自分の姿を妄想に近い形で想像をした。
「向井くん……」
夢や妄想だと『恥ずかしー!』なんて言いながら、ベッドをゴロゴロと転げ回るほどはしゃいでいたはずなのに。
想像していた事が現実になったこの瞬間に、信じられない感情が沸き上がって来た。
『戸惑い』
真剣に好きだ、と言ってくれている彼に、どう言葉を返していいか分からない。
一度は頭の中で想像していたはずなのに。
向井くんは、そんな私をちょっとだけ困ったような表情で見つめていた。
たぶん、今の戸惑いが思いっきり顔に出てしまっていたのかもしれない。
「渡瀬にそんな顔をさせるつもりは無かったんだけどな……ただ、あの時は気持ちを伝えられなかったから、どうしても今言いたかったんだ」
それから、向井くんは手を伸ばして固まったままの私の手を包みこむように、そっと触れた。