幼馴染みの期限
さっきから私を『慰めて』くれている(らしい)二人は職場の同僚で、且つ気がおけない友人でもある。
私達は地元、ここ羽浦市内の『ニコニコえがおデイサービスセンター』(略してニコデー)という名前の介護施設で働いている。
私の横でハイペースでビールのジョッキを空けているのは木原 才加。彼女は看護師だ。
彼女とは高校一年に同じクラスになったことがきっかけで仲良くなった。
お人形のようなはっきりとした顔立ちで、ストレートロングの黒髪をスッキリと纏め上げて働いている姿は一見育ちの良いお嬢様を連想させるけど、中身は酒豪でおっさんだ。性格もサバサバしていて潔い。
周りの同級生達のように群れることもなく、独りでいることが多かった才加は『適当に合わせる』というスキルだけは持っていて友達が多かった私のことを最初は苦手に感じていたようだ。
だけど、何となくお互いに女子集団が苦手という雰囲気を感じ取ると、その後はあっという間に打ち解けて仲良しになった。
美人な才加はモテるけど、外見だけを見て寄って来る男が多い。だから『付き合いたい』と思うほどの男に未だに出逢えないでいる。
そして私の向かいに座って私のことを適当にからかいつつ、グラスを傾けている男は沖田 広海。私と同じく介護士として働いている。
広海とは家族ぐるみの付き合いで、生まれた時から一緒の、所謂幼馴染みってヤツだ。