幼馴染みの期限

『離れないで』



私の願いを広海はちゃんと守ってくれた。


過去の想いと今までの関係に区切りをつけて、前に進む。


……私にそれができるのかな。



あぁ……思えばこんなに泣いたのもあの日以来だ。



あれから……失恋をしても、ここまで目が赤くなるほど泣いたことはなかった。



いつも広海が側にいてくれたから、私は笑っていられたんだ。



10年前。


茜色に染まった校舎の中、空き教室の片隅で隠れるように泣いていた私を見つけ出してくれたのは広海だった。


***


「委員長ー」「ちょっと、いい?」

ホームルームが終わるとすぐに、同じクラスの真美(まみ)ちゃんと美咲(みさき)ちゃんが私の席に来た。


この『ちょっと、いい?』という言葉を聞いて、私は『あぁまたか……』と心の中では思ったけど、そんな気持ちを隠して「うん、いいよ」と笑顔でうなずいた。


たぶん『また?』なんて口に出してしまったら……今よりもっと酷い目に遭うはずだ。



何がきっかけなのか、全然分かんない。


だけど、二人に私はしつこく絡まれていた。


酷い嫌がらせをされたり、暴力を受けた訳じゃない。


だからこれはいじめじゃなくて、絡まれているだけだと思う。


だから『やめて』なんて言えない。
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