幼馴染みの期限

渡り廊下を抜け、別棟の方へと歩いていく二人の様子がいつもと違うことに気がついた時にはもう遅かった。


今別棟で使われている教室は音楽室だけだ。

普段の放課後は、この教室は吹奏楽部が使っている。今は冬休み明けのテスト期間中で部活は休みだから、何の音も聞こえないのが不気味だった。


吹奏楽部じゃない二人は、何の躊躇いも無く音楽室の扉を開けた。


音楽室の中にいたのは数人の女子で、全員に見覚えがあった。


真美ちゃんと美咲ちゃんはこの人達とは関係無いと思ってたんだけど……


「待ってたよ、渡瀬さん」


その中の一人が私に声をかける。


持田 梨華(もちだ りか)さん。彼女の名前はたぶん同じ学年じゃなくても、知らない人はいないんじゃないかと思う。


「呼び出してごめんね」そうにっこりと彼女が笑うと、腰まで伸びる栗色の髪の毛がふわふわと揺れた。


その姿とスタイルは彼女の名前と同じ某有名なお人形さんのように完璧だけど、親しみやすさを感じるあのお人形さんとは逆で、常に近寄りがたいオーラを放っている。


……だって絶対自分の事可愛いと思ってるでしょ。


校則でダメって書いてあるパーマをかけてるのに「天然でーす」って言い張るくらいには図々しい人だし。

しかも、この髪の色。


ハーフか?クォーターか?


そんなくるんくるんでふわんふわんの茶色の髪の毛が、天然なワケあるかい。
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