幼馴染みの期限

ただ、今まではこんなにめんどくさく、分かりやすく絡んで来る人がいなかっただけだ。


「分かった。広海とは必要以上に近づかない。話さない。……これでいい?」


「言われる前にそうしてよね」


最後まで自分が優位だと譲らなかった梨華さんにめんどくさいなーと思いつつ、音楽室を後にした。



***


だって私達は幼馴染みだ。


二人の間には何もない。何なら、親同士が仲がいいだけで惰性で付き合ってきた仲だ。


だから恋に落ちる気も、予定もないんだ。




……それに私だって今、恋をしている。

同じクラスの向井慶くんに。



顔を見るだけでときめいて、声を聞くと胸がキュッと音を立てる。


これを恋と言わずして、何と言う。


当面の目標は「おはよう」「バイバイ、また明日ね!」以外の会話を30秒以上持たせることだったりするけど。


自分の恋にいっぱいいっぱいの私は、他人の恋に関わってる暇なんてないんだから。
< 88 / 345 >

この作品をシェア

pagetop