幼馴染みの期限
こいつも昔からモテまくっていた。
見た目からサラサラだと分かるような、少しだけ茶色がかった髪の毛。パッチリとした二重瞼と長い睫毛に縁取られた大きな薄茶色の瞳。すっと通った鼻筋。ふっくらと厚みのあるピンク色の唇。
一見女性に見えるほど整った顔立ちをしている。
だけどコイツは口が悪い。喋らなければもっとモテるのにな、と思う。
彼女は今はいないらしい。たぶんその口の悪さが災いしているんだと思う。
幼馴染みだからもう馴れてしまったけど、けっこういい加減で忘れっぽい所もある。
でも、整いすぎて一見冷たそうに見える顔に似合わず、気遣いができていたり、仲間思いな人だったりもする。
だから、沖田広海という人間を総合すると『イイヤツ』ってところに落ち着く。
10代の頃のように連れだって遊びに行くことはあまり無くなってしまったけど、ハタチを過ぎたらこうして自然と飲みに行くようになった。
飲み会を開く主な理由は、
①私が一目惚れした人に彼女がいると分かった時
②私が合コンで失敗した時
③今日のように私が好きになった人が友達と付き合い始めた時……
だいたいこの3つに絞られる。
つまり、失恋した時と失恋した時と失恋した時だ。
「今年こそは彼氏と誕生日を過ごそうと思ってたのに……あー、どうしてうまくいかないのかなぁ……」
私の誕生日は2月14日。バレンタインデーだ。
もう1月も半ばに差し掛かってしまった。バレンタインまでに彼氏ができる、という大逆転でドラマチックな展開は期待するだけ無駄だよね。
大体、私の人生にそんなドラマは生まれた試しがない。
何で……どうして恋人達の日に生まれたのに、私は恋に縁が無いんだ。
そんな愚痴と一緒に私は盛大なため息を吐いた。