幼馴染みの期限
「ちょ、ちょ、ちょっと。じゅりっち、どしたの?」
宏美さんが慌てて私と広海の間に割って入る。
「今日は私と話したかったの?……何か、空気読めなくてごめんね」
明らかにしゅんと肩を落とす宏美さんを見ても『そんなことないですよー!』なんていつものような陽気に言葉を返せない。
宏美さん、違うんです。
空気を読めないのは私です。
……昔からずっと私は空気が読めなくて、大切な人の気持ちを傷つけてばかりなんです。
泣くだけ泣いて、わざわざ駆けつけてくれた宏美さんや広海に『ありがとう』も『ごめんね』も言えずに、ただこうして黙っているだけなんだから。
「樹里。お前今日は本当におかしいぞ?……ほんとに何かあったんじゃないのか?……まさか、ケイに何かされたのか?」
「広海には関係ないっ!!」
『ケイ』という名前が広海の口から出た瞬間に、思わず大声で叫んでしまっていた。
周りの席やカウンターからの視線にさらされて、宏美さんが慌てて頭を下げていた。
「なぁ、ちょっと落ち着けよ。関係無いなんて言うなよ。そんな泣き腫らした顔してたら、さすがに無視できねぇだろ」
「そうだよ、じゅりっち。私に話せなくても、ろみっちなら大丈夫でしょ?」