幼馴染みの期限
「そうだよ。俺たち幼馴染みの……腐れ縁だろ?今さら遠慮すんなよ。『ロミジュリ』の仲だしな」
『ロミジュリ』
広海の言葉を聞いて、目の前が真っ暗になっていくような感覚に襲われた。
「……違う」
暗闇の中から這い上がってやっとの思いで否定の言葉を口にする。それは自分でも驚くくらい、心に冷たく響いた。
「私は……私は渡瀬樹里だよ。ジュリエットじゃない。広海だって……ロミオなんかじゃない。私達を……私の価値をそんなくだらない言葉に当てはめないで」
「確かに広海と私は幼馴染みだけど、何でも話せる仲じゃない。……話したくないこともあるし、秘密にしたいこともあるよ」
広海だって……そうでしょう?
そう思いながら広海の目をじっと見つめた。
広海と才加が本当に付き合っているかどうかは分からない。けど、二人が一緒にいるところを私はこの目ではっきりと見た。
なのに広海は宏美さんに、ここに来る前は才加と一緒にいたことを話していない。
嘘をついた分だけ、二人は人には言えない関係なんじゃないかと邪推をしてしまう。
本来ならフリー同士で遠慮なく付き合えるはずの二人がそれを隠す理由は……やっぱり自分のせいだとしか思えない。