幼馴染みの期限

好きな人がいる広海を、私は『幼馴染み』という鎖で縛り付けているのなら……。

こんな歪んだ関係はもう普通の幼馴染みじゃない。


この関係は間違っている。


いつまでも一緒にいられる訳がない。



「何なら……今日で『幼馴染み』終わらせてもいいよ。一日二日早く終わったって別にたいして変わらないよね?」


そう淡々と告げると、からかうような口調で話しかけていた広海の顔から笑顔が消えた。


「……お前本気で言ってんのか?」


「本気だよ」


そこまで話して、私達の様子を見ていた宏美さんと目が合った。


私達の会話の内容が分からないからだろうか、彼女はじっと黙って立っている。


それでも広海をここに呼んでしまったことを気にしている様子で、唇を引き結んだままのその表情は固かった。


あぁ……またやってしまった。


私は無神経だから、知らずに大切な人を傷つけてしまう。


いつもそうだ。私は10年経っても何も変わっていない。


やっぱり、こんな関係はもうやめよう。


今更だけど、あの時広海に『そばにいて』と言った私が間違っていたんだから。
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