陰なる閃刃
◇達人の章
・初めての出会い
暖かくなった。
この間までの厳しい寒さが、嘘のようだ。
浪人風情の根津虎之助(ねづとらのすけ)は、尾張にある目的の屋敷にたどり着く。
彼は、屋敷を囲む塀のそばで、後ろを振り返る。
一緒に旅をしてきた手下の五人が、じっとこちらを見ている。
「お前たちは、ここにいろ」
虎之助はそう言うと、自分の頭を越える塀を一気に飛びこえ、屋敷の庭にその身を沈める。
三十半ばの年にしては、身が軽い。
屋敷の中には人がいるのであろうが、庭の様子を見るかぎり近くに人気はない。
会うべき人物は、この屋敷の当主だ。
虎之助は、自分たちをここへ送りこんだ主人の言葉を思い出す。
『あのお方に出会ったなら、斬ってもよいぞ』
主人は、ニヤリと笑いながら言った。
『ただし、おぬしらが斬ることができれば、の話だがな』
この間までの厳しい寒さが、嘘のようだ。
浪人風情の根津虎之助(ねづとらのすけ)は、尾張にある目的の屋敷にたどり着く。
彼は、屋敷を囲む塀のそばで、後ろを振り返る。
一緒に旅をしてきた手下の五人が、じっとこちらを見ている。
「お前たちは、ここにいろ」
虎之助はそう言うと、自分の頭を越える塀を一気に飛びこえ、屋敷の庭にその身を沈める。
三十半ばの年にしては、身が軽い。
屋敷の中には人がいるのであろうが、庭の様子を見るかぎり近くに人気はない。
会うべき人物は、この屋敷の当主だ。
虎之助は、自分たちをここへ送りこんだ主人の言葉を思い出す。
『あのお方に出会ったなら、斬ってもよいぞ』
主人は、ニヤリと笑いながら言った。
『ただし、おぬしらが斬ることができれば、の話だがな』
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