陰なる閃刃
男は覚悟を決める。


「もはや、これまでっ」


自分の持つ短刀を己の首に当て、一息にかき切った。

鮮血がほとばしる。

男は前のめりに倒れ、そのまま絶命する。

赤子は守った。だが、男の雇い主はわからない。


「とりあえず、佐々本殿の部屋に行こう」


利巌たちはその部屋を出て、佐々本のいる部屋に向かうのだった。


話は、これで終わらない。


「しくじったか…」


赤子のいる部屋を出た利巌たちが、屋敷の縁側を歩く。

その姿を、屋敷から離れた家の屋根から、覗いている男がいた。

この男も忍装束を身にまとっている。

だが、武器は所持していない。

情報収集および伝達を専門とする間者である。

(主人に伝えねば)

そう思い、身体の向きを変えようとしたときだった。


「!?」


姿は見えないが、誰かが自分を見ているのを感じる。


< 30 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop