陰なる閃刃
追っ手の一人が口をひらく。


「お前の主人は誰だ」


別の一人が、刀の切っ先を間者に突きつける。

(まあ、簡単には口を割るまい)

問いを発した藤吉は、そう思う。

小刀を足に命中させた喜八郎や、いま刀を抜いている伊助も、おなじ思いでいる。

間者が、ニヤリと顔をゆがめる。

(しまった!)

藤吉は気づいたが、すでに遅かった。

間者は瞬く間に白目をむき、苦しむ様子を見せたかと思うと、あっけなく息絶えた。

呆然とたたずむ三人。

伊助が刀を収め、藤吉の方を振りむく。


「これは…トリカブト?」

「おそらく、な」


速効性の猛毒である。

間者は小刀を足に受けて地に落ちた際に、自ら毒を盛ったのだ。

結局、今回の一件を企んだ黒幕は誰なのか、その正体をつかめぬままに終わる。

三人は仕方なく、佐々本の屋敷で待っている虎之助のもとに帰って行ったのだった。


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