陰なる閃刃
そのとき、新山の身体のそばを何かが通り抜けようとする。

鼠だと、すぐにわかった。

新山は、その鼠を素早く捕まえる。

(ひとつ、思い知らせてやろうか)

新山は一計を案じ、縁の下からその細い身体を移動させるのだった。


厠から部屋にもどった橋ノ下は、まだ怒りがおさまらない。

企みが失敗しただけでなく、首謀者が自分である事が知られるとは、不手際極まりない。

もっとも、新山が屋敷に侵入するまでは、今回の黒幕が誰なのか柳生に知る者はいなかったのだが。


「くそ、まずいことになった」


佐々本はもちろん、自分の正体を知る柳生も潰さねば、自分は完全に終わってしまう。

だが、柳生を相手にするのは、平助の言うとおり無謀であろう。

(どうすれば…)

愚かなことを必死で考えている橋ノ下の目の前に、なんの前触れもなく何かがボタボタッと落ちてくる。


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