陰なる閃刃
驚いた橋ノ下は目を丸くし、なにが落ちてきたかとそれを見るなり、顔から血の気が引いてゆく。

橋ノ下の前に、鼠の死骸が転がっている。

ただの死骸ではない。

頭と胴が切り離されている。

橋ノ下の真っ赤な顔が、真っ青になる。

天井裏にいる新山が、精神的にトドメをさす。

完璧に気配を消し、声だけを部屋に響かせる。


『首を洗って待っていろ』


橋ノ下の全身が凍りつく。


「ぎゃあああああっ」


恐怖に顔をひきつらせ、小便を漏らしながら、のたうちまわる橋ノ下。

(馬鹿が…)

用が済んだ新山は、長居は無用と屋敷を抜け、虎之助のもとに帰って行った。


三日後――

城内で、橋ノ下が狂い死にしたという噂が広まる。

それは、虎之助たちの耳にも入ってきた。

柳生屋敷の一室で、虎之助と新山が向きあう。


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