陰なる閃刃
◇鬼神の章
・もと主人
虎之助たちが尾張の柳生屋敷にきて、ひと月あまりが流れた。
太陽が徐々に西に傾きはじめたとき
「ん?」
屋敷の庭にたたずむ虎之助の目に、こちらに向かって歩いてくる男の姿が映る。
虎之助を確認した相手は、虎之助に親しげに話しかけてくる。
「よう虎、元気でおったか?」
「じ、十兵衛様!」
十兵衛のいきなりの訪問に、虎之助は驚いた。
柳生十兵衛三巌――
柳生但馬守宗矩の長男であり、現在は江戸で将軍家光に仕えている。
…はずであった。
「十兵衛様、またしても将軍様の勘気に触れなさいましたか…」
「ち、違うわ、馬鹿者!」
情けない目で問いかけてくる虎之助に、十兵衛は焦って怒鳴る。
「柳生の里に用があって帰るところだが、そのまえに利巌殿に挨拶しようと思っての」
十兵衛は、旅で汚れてボロボロになった姿でそう言った。
太陽が徐々に西に傾きはじめたとき
「ん?」
屋敷の庭にたたずむ虎之助の目に、こちらに向かって歩いてくる男の姿が映る。
虎之助を確認した相手は、虎之助に親しげに話しかけてくる。
「よう虎、元気でおったか?」
「じ、十兵衛様!」
十兵衛のいきなりの訪問に、虎之助は驚いた。
柳生十兵衛三巌――
柳生但馬守宗矩の長男であり、現在は江戸で将軍家光に仕えている。
…はずであった。
「十兵衛様、またしても将軍様の勘気に触れなさいましたか…」
「ち、違うわ、馬鹿者!」
情けない目で問いかけてくる虎之助に、十兵衛は焦って怒鳴る。
「柳生の里に用があって帰るところだが、そのまえに利巌殿に挨拶しようと思っての」
十兵衛は、旅で汚れてボロボロになった姿でそう言った。