陰なる閃刃
男たちが刀を持って立っているのは、頬に傷のある男が小屋に入るときに、誰が来たのかと警戒したためだろう。

伊助は、なにやら談笑している男どもの観察に集中する。

四人とも、食いっぱぐれの浪人という風情である。

そのなかで腕がたちそうなのは、自分が跡をつけてきた頬に傷のある男だ。

他の者は、どれほど剣術の心得があるかは分からない。

しかし、血の臭いは感じる。


伊助が気になるのは、拐われた娘たちが、この先どうなるかである。

そのあたりの情報が聞けないかと、しばらく男たちの話に耳をかたむけていた伊助だが、聞こえてくるのは他愛ない話ばかりで肝心なことがつかめない。


伊助は断った気配をそのままに、壁を左回りに伝いながら足を進ませる。

入り口の左側に面した壁は、右側に比べてしっかりしている。

その分、隙間が見つからない。


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