陰なる閃刃
(……!?)

伊助は、小屋の入り口前方の林から人が近づいてくる気配を感じた。

素早く入り口の反対側に回る。

そして、誰が近づいてくるのかと壁からチラッと顔をだして、様子をうかがう。

林の中から姿をあらわしたのは、ここに来るまえに見た娘を襲った三人組だった。

どうやら、この掘っ立て小屋は男どものねぐらであり、女子たちを監禁する場所でもあるようだ。

そんなことを考えているとき、ひときわ鋭い気配が伊助にぶつけられる。

伊助は思わず身をかがめる。

明らかに、こちらを見ている。

まるで、壁越しに視線を突き刺してくるようだ。

(ぬかったか…)

伊助は額から冷や汗を滴らせながら、壁を盾にそっと林のまわりをのぞく。

(あれ?)

知った顔が、自分を見ている。

(新にぃ!?)

新山であった。

新山は野良猫を呼びよせるように、年下の伊助を手招きする。


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