陰なる閃刃
伊助は、小屋の中にいる男どもに悟られることなく、新山のもとへと身を移す。


「新にぃ、なぜここへ?」

「話はあとだ。ひとまず、ここから離れよう」

林を抜け、道ばたに出た二人は、並んで歩きながら話す。


「俺の張り込んでいた所はハズレだったみたいでな、伊助、お前のとこに行ったんだよ」

新山は腕を組みながら、話を続ける。


「で、伊助はどこへ行ったんだろうと思っていると、あの三人が来てな」


掘っ立て小屋に後から来た三人組である。

人通りの少ない場所に、三人もの男たちが急にあらわれ、新山は不審に思う。

さらに、逆の方から籠をかついだ二人が来る。

そして、五人の間でなにやら話がかわされる。

ただの顔見知りではなさそうだ。


「比草屋の旦那も、よくやるこった」

(ヒグサヤ?)


比草屋は、尾張に知られる豪商のひとつである。


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