陰なる閃刃
なんの警戒もなく無防備な与一は、自分の背後に近づいてくる影に気づかない。

まだ小便が続いている最中、与一は誰かの手で不意に口をふさがれる。

驚いて目を見開いた瞬間、与一の喉もとに刃が当てられ、それが横一文字に鋭く走った。

与一の命は、喉から吹き出る鮮血とともに身体から抜け出てゆく。

(まず、一人)

崩れ落ちる与一の後ろに、喜八郎が立っている。


小屋のなかでは、よた話が続いていた。

男たちの視線が、女子たちに向けられる。


「あの娘たちは、明日には売られるらしいぜ」

「そのまえに、俺たちが先に楽しみたいもんだ」

「そうだな」


男どものギラつく視線に、女子たちの背筋が凍りつく。


これから何をされるのかと、不安と恐怖で身体の震えが止まらない。

逃げたくてたまらないが、それが出来るなら、とっくに逃げ出しているところだ。


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