陰なる閃刃
十兵衛が悪党どもを一方的に打ちのめしている間に、おせんが伊助に続いて入ってきて、娘たちを小屋の外へ救いだす。

そのころ、籠屋の二人の居所をつきとめた藤吉が、比草屋の使いと称して彼らに掘っ立て小屋に来るよう呼び出し、林のなかに入ったところで喜八郎とともに始末する。

見事なチームワークである。

今回は十兵衛がいるせいか、かなり楽に事が運んでいるようだ。


小屋のなかでは、身体の震えが止まらない二人が、賢明な判断をくだそうとしていた。

(こんな化物、相手にしてられるかっ)

悪党たちは、十兵衛に背を向けて逃げだした。

絶対に勝てないことが分かっていながら、無理に戦って斬り殺される必要はない。

小屋の外に出た二人だが、そんな彼らをもう一人の鬼神が待っていた。


「どこへ行く、おぬしら」


逃げようとする男たちに、虎之助がそう言った。


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