陰なる閃刃
悪党二人は、思わず足を止める。

まさか小屋から出たところで、何者かが自分たちを待ちかまえているとは思わなかった彼らは、呆然となる。

ハッと我にかえったとき、無意識に虎之助に刀を向けた。

虎之助が、ニヤッと笑う。


「ほう、俺とやり合う気か」


ゆっくりと刀を抜いた。

その動作に余裕が見える。

虎之助の強さが、肌に伝わってくる。

(くっ…)

悪党どもの背中に、いやな汗が流れる。

心臓の鼓動が、命の危機を知らせるように速くなる。

一人では勝てないだろう。

だが、こちらは二人いる。

男たちは、二手に別れて虎之助の左右にまわりこもうとする。

虎之助は動かず、目だけで相手を牽制している。

お互いに、一歩ふみ込めば刀がとどく距離になった。

悪党どもの緊張と恐怖が、極限に達する。

血も凍りつくほどに寒気のする静寂を、烏の鳴き声がやぶった。


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