陰なる閃刃

・予期せぬ物事

ひと仕事終えた十兵衛は、おせんが救いだした娘たちの方へ向かって行く。

彼女たちの前まで来た十兵衛は、にっこりと笑顔をつくった。


「無事であったか。良かったのう」


そんな十兵衛に対して、娘たちはひどく怯えている。

返り血で全身を赤く染め、血の匂いを漂わせる男に近よられて、恐怖を感じない方がおかしいといわれれば、確かにそうかも知れない。

そんな女子たちを守るかのように、おせんが十兵衛との間に入ってくる。


「十兵衛様、みんなが怖がっております。あっちへ行ってください」

「いや、わしはみんなを…」


おせんが怒った顔をして十兵衛を睨む。


「もうっ。みんなが怖がっているから、あっちへ行ってください!」

「……」


おせんにきつく言われた十兵衛は、仕方なく虎之助たちのところへ、トボトボと引き返す。

そして皆のいる場所へもどったとき、十兵衛は子どものように愚痴を言うのだった。


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