陰なる閃刃
変な顔をしている連也は、やはり怪訝に思うのだろう。

十兵衛は、それらしい言い訳を考える。


「まあ、別に、なんだ…人を斬りに行くわけではないからな」


そういいつつ、本心は隠す。

(人は斬らねど、悪党どもは斬るけどな)

「伊助の刀でも腰に差して出かけて行く」と、連也に告げた十兵衛であった。

利巌にも連也にも、悪党討伐の話は、ひと言もしていない。

だが、利巌にはすべてお見通しだった。


利巌は、用事が片づいた新山を部屋へ呼ぶと、風呂敷包みを前に差しだす。


「十兵衛は、これがないと帰って来れないかもしれん。渡しに行ってくれぬか」


新山には、風呂敷の中になにが入っているのか分からない。


「一応、虎之助の分も入れてある。まだ足りなければ、知らせにまいれ」

「はっ」


そして新山は風呂敷包みを手に、十兵衛たちのもとへと向かって行ったのだった。


< 71 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop