陰なる閃刃
新山から話を聞いた十兵衛は、利巌の洞察力に舌をまき、風呂敷の中の着物を手にとった。
「利巌殿には、かなわんなあ」
本当にそうだと、虎之助も思う。
二人は新しい着物に着替え、新山と一緒に利巌の屋敷に帰って行った。
その日、夜がふけて星の見える戌の刻――
提灯を片手に、手ぬぐいを頭からかぶって顎の下で結んでいる男が、比草屋の屋敷を訪れる。
「あっしは、女郎屋の使いの者です」
見るからに怪しい男は、太った身体をした比草屋にそう言った。
「女郎屋」のひと言を聞いて、比草屋の顔から、いぶかしげに想う色が消える。
「例の女子のことで…と、そう言えば分かると」
比草屋はうなずいた。
「一刻ほどして、主人が会いたいと申しております。そのときは、あっしが迎えに参りますので」
男の言葉に了解する。
男は「では」と言いのこし、その場からさっさと去って行った。
「利巌殿には、かなわんなあ」
本当にそうだと、虎之助も思う。
二人は新しい着物に着替え、新山と一緒に利巌の屋敷に帰って行った。
その日、夜がふけて星の見える戌の刻――
提灯を片手に、手ぬぐいを頭からかぶって顎の下で結んでいる男が、比草屋の屋敷を訪れる。
「あっしは、女郎屋の使いの者です」
見るからに怪しい男は、太った身体をした比草屋にそう言った。
「女郎屋」のひと言を聞いて、比草屋の顔から、いぶかしげに想う色が消える。
「例の女子のことで…と、そう言えば分かると」
比草屋はうなずいた。
「一刻ほどして、主人が会いたいと申しております。そのときは、あっしが迎えに参りますので」
男の言葉に了解する。
男は「では」と言いのこし、その場からさっさと去って行った。