身代わり王妃の恋愛録
*12th Day*
目が覚めたら見慣れた部屋が広がっていて。
何故だか隣には陛下がいて。
ついでに言えば私は抱きしめられ…もとい拘束されていて。
「…なんで?」
私、帰ってきたんだっけ?一応作業は終わってたから別に帰ってきても平気なんだけど、そういうことじゃない。
一体何がどうしてこうなってるの?
「陛、下…?」
私は後ろから陛下に拘束されている状態なので、陛下の様子がわからないけど、寝息が聞こえる…多分まだ寝ているのだろう。
時刻は6時。まだ寝てても良い時間だから良いのだけどね。
それにしても。なぜだかあまり清々しい朝だとは思えない。
もう既に空は明るくなってきているし、睡眠時間はそれなりに確保できたはず。
一体何がこんなにも私の心に暗い影を落としているのだろうか。
変な夢でも見たか。けれどあいにく夢なんて覚えてない。自分がここで寝ている理由すら思い出せないのだ。
仕方ない。思い出すのはあとだ。どうせ単純な私のこと、陛下と過ごす時間が少しでも取れればすぐに忘れちゃうだろう。
よし、料理の下準備を取りに行こう。
そう思って寝台を抜け出そうとしたけれども。陛下の腕はしっかり私を捕まえている。私が動けば陛下に気づかれてしまうに違いない。それに起こしてしまうかも。
私は静かに目を閉じた。まだ時間はあるしもう少し陛下を寝かせてあげたい。
いや、それよりも何よりも、まだこのままでいたいー。陛下の腕の中は心地良くて、とても安心する。
本来ならここは私の居場所ではないのだけれど
これは不可抗力。だって覚えていないし、私から陛下の寝台に滑り込むなんてありえないんだから。
罪悪感でズキズキと痛む自分の心にそんな言い訳をして私は静かに目を閉じた。
これが少し日が見えてきた午前6時の話ー。