① オオカミさんとクマさんに。狙われた私の…
ん?
扉の前にピタリと止まる。
何やら小さな呻き声。
うっかり行程を忘れた私は、そっとドアを開け、中の様子を確かめた。
…!!
思い出した。ドアをノック、だった。
そして全てを理解した。
うわぁ……
キス、してる。
大神さんと、社長の奥様が。
それも、したことも見たこともないような凄いキス。
『急いで下さい、時間です』の声をかけるべきだった。
しかし。
奥様がヘッドのボードに身を預け、彼の背中に両腕を回す。彼は壁に左肘をついて、唇を吸う。
「ん…くっ」
堪えきれない奥様が、彼の後頭部に右手を押し付け、深く舌を浸入させた。彼はそれを受け入れて、更に相手の口腔に己のそれを押し入れてゆく…
……スッゴい。
思わず見入ってしまった。
喉頭が動き、唾液を溜飲する。やがて奥様の手が、彼の下腹に触れようとした瞬間、ドアの隙間から目が合った。
(早くしろ!)
詰るような鋭い視線に、私ははたと我に返った。
大きめにドアをノックする。
「お、大神さん!大変!時間が迫ってます!」
二人が離れた気配がして、やっと私は中に入る。
「申し訳ありません、失礼します」
「また来てね」
玄関まで見送って頂いた奥様の、切なげな表情に罪悪感を覚えながら、たった一人の住人には広すぎる館を後にした。
扉の前にピタリと止まる。
何やら小さな呻き声。
うっかり行程を忘れた私は、そっとドアを開け、中の様子を確かめた。
…!!
思い出した。ドアをノック、だった。
そして全てを理解した。
うわぁ……
キス、してる。
大神さんと、社長の奥様が。
それも、したことも見たこともないような凄いキス。
『急いで下さい、時間です』の声をかけるべきだった。
しかし。
奥様がヘッドのボードに身を預け、彼の背中に両腕を回す。彼は壁に左肘をついて、唇を吸う。
「ん…くっ」
堪えきれない奥様が、彼の後頭部に右手を押し付け、深く舌を浸入させた。彼はそれを受け入れて、更に相手の口腔に己のそれを押し入れてゆく…
……スッゴい。
思わず見入ってしまった。
喉頭が動き、唾液を溜飲する。やがて奥様の手が、彼の下腹に触れようとした瞬間、ドアの隙間から目が合った。
(早くしろ!)
詰るような鋭い視線に、私ははたと我に返った。
大きめにドアをノックする。
「お、大神さん!大変!時間が迫ってます!」
二人が離れた気配がして、やっと私は中に入る。
「申し訳ありません、失礼します」
「また来てね」
玄関まで見送って頂いた奥様の、切なげな表情に罪悪感を覚えながら、たった一人の住人には広すぎる館を後にした。