① オオカミさんとクマさんに。狙われた私の…
居酒屋にて…
「遅い!」
その後、私たちは本土行きのフェリーで静岡市内に移動し、静岡支社に挨拶によって、今日の予定を終った。
それまで終始無言だった大神さんは、支社を出るなり一喝した。
「ひぃっ、済みませーん!」
「ったく、まあギリギリだったものの、あと1分遅れてたらどうなっていたことか…」
「で、でもっ、まさかあんな…もし社長に知れたら…」
「…社長は大丈夫。寧ろ望んでるさ」
いかにも苦々しいという様子で、言い捨てる。
「そんなアホな…」
「いいか?
社長には秘書課の松嶋さんを始め、少なくとも社内に4人の彼女がいる」
「ええっ⁉でも確か、松嶋さんって」
大神さんの彼女では?
「俺はダミーだ。
その上、奥様にまであてがおうと…くそっ」
「うわぁ、ドッロドロですね~」
「社長にとって俺は、精々いい捨てゴマなんだ。
奥様の機嫌がよければよし、万一関係なんか結んだら、クビにして離婚に持ち込めば、それでよしってもんだ」
市内のビジネスホテルへの帰り道をゆるゆる歩きながら、彼は珍しく多弁であった。
「それも出世コースの世渡りって訳ですね。いやぁ、大変だなぁ」
…私だったら絶対嫌だが。
そういったストレスで我々係員にも、厳しく当たるのだろうか。
だとしたら少し可哀想な気もするが。
「おうよ、クビと出世の綱渡りよ。それをお前は…ん?」
「はい?」
「いや…なんか、知ってる人がいたような…なんか見られてないか?」
「別に、何も?」
「そうか…」
その後、私たちは本土行きのフェリーで静岡市内に移動し、静岡支社に挨拶によって、今日の予定を終った。
それまで終始無言だった大神さんは、支社を出るなり一喝した。
「ひぃっ、済みませーん!」
「ったく、まあギリギリだったものの、あと1分遅れてたらどうなっていたことか…」
「で、でもっ、まさかあんな…もし社長に知れたら…」
「…社長は大丈夫。寧ろ望んでるさ」
いかにも苦々しいという様子で、言い捨てる。
「そんなアホな…」
「いいか?
社長には秘書課の松嶋さんを始め、少なくとも社内に4人の彼女がいる」
「ええっ⁉でも確か、松嶋さんって」
大神さんの彼女では?
「俺はダミーだ。
その上、奥様にまであてがおうと…くそっ」
「うわぁ、ドッロドロですね~」
「社長にとって俺は、精々いい捨てゴマなんだ。
奥様の機嫌がよければよし、万一関係なんか結んだら、クビにして離婚に持ち込めば、それでよしってもんだ」
市内のビジネスホテルへの帰り道をゆるゆる歩きながら、彼は珍しく多弁であった。
「それも出世コースの世渡りって訳ですね。いやぁ、大変だなぁ」
…私だったら絶対嫌だが。
そういったストレスで我々係員にも、厳しく当たるのだろうか。
だとしたら少し可哀想な気もするが。
「おうよ、クビと出世の綱渡りよ。それをお前は…ん?」
「はい?」
「いや…なんか、知ってる人がいたような…なんか見られてないか?」
「別に、何も?」
「そうか…」