① オオカミさんとクマさんに。狙われた私の…
「あら、早かったのね。…次はこれ、お願いね」
息を切らして花瓶を置いた私に、新たな指令が下る。
果物ナイフは買っておけ、とはそういう事か。奥様はキッチンの調理具を把握していない。
超高速で乱切りにした果物には目もくれず、彼女は最後の指令を下す。
「…そういえば、お茶うけが無かったわね…あなた、買ってきて下さる?」
「これは、気が利きませんで」
ベッドサイドに立つ大神さんに、こころなしか焦燥が見られる。
「ゆっくりでいいのよ」
(早く、な)
すれ違い様に囁いて、すぐに奥様との談笑に戻る。
これまでは彼の言う通りの展開である。
少し離れたケーキ屋までダッシュしながら私は半ば呆れ、半ば感心した。
息を切らして部屋の前に到着。
こう見えて、大学時代は長距離のスプリンターだったのだ。
補欠だったけど。
えっと、次はどうするんだったっけ?
確か…あれ?
致命的だった。
私は、余りに走るのに霧中で、一番肝心な部分をど忘れしてしまったのだ。
息を切らして花瓶を置いた私に、新たな指令が下る。
果物ナイフは買っておけ、とはそういう事か。奥様はキッチンの調理具を把握していない。
超高速で乱切りにした果物には目もくれず、彼女は最後の指令を下す。
「…そういえば、お茶うけが無かったわね…あなた、買ってきて下さる?」
「これは、気が利きませんで」
ベッドサイドに立つ大神さんに、こころなしか焦燥が見られる。
「ゆっくりでいいのよ」
(早く、な)
すれ違い様に囁いて、すぐに奥様との談笑に戻る。
これまでは彼の言う通りの展開である。
少し離れたケーキ屋までダッシュしながら私は半ば呆れ、半ば感心した。
息を切らして部屋の前に到着。
こう見えて、大学時代は長距離のスプリンターだったのだ。
補欠だったけど。
えっと、次はどうするんだったっけ?
確か…あれ?
致命的だった。
私は、余りに走るのに霧中で、一番肝心な部分をど忘れしてしまったのだ。