【完】最初は、それだけだったのに。
「脈なんてあるわけないじゃん。だって話したのなんか昨日が初めてだよ?しかもなんの取り柄もない私を好きになるなんてありえないよ!」
顔の前で手先を左右に振るとはーっとわざとらしく絵麻がため息を吐いた。
「文香はなんでいつも自分を卑下するの!あんたは可愛いのよ!性格だって優しいし!もっと自覚と自信をもちなさい!」
机を軽くバンっと叩く絵麻は迫力があった。
「ははっ、絵麻ありがとう。励ましてくれて。ほら!チャイム鳴った鳴った〜」
お世辞を言う絵麻をチャイムを理由にして席に戻らせた。
チラッと彼を見ると、いつものように授業を受ける姿勢をとっていた。
真面目だなと思いながら、号令に合わせて席を立った。