【完】最初は、それだけだったのに。
* * *
「んじゃー、この三種類の紙をホッチキスで止めてくれ。学年分あるからよろしくっ!」
ニコニコ言う先生にすこし苛付きを感じながらも返事をする。
学年分って…考えるだけで恐ろしい。
よいしょっと二種類重ねて持とうとすると、隣から肩を掴まれた。
「…いいよ。市岡はホッチキス持って。」
えっ…?!
私の名前知ってたの?!
…いや、今はそういうことじゃないでしょ私!
「な、なんで?私持てるよ?」
「…紙でも結構重いから。黙ってホッチキスもってって。」
振り向いてみるとそこには真顔でそう言う彼がいた。
「いや、でも…!」
「いいから。お前女子だろ。重いのは男の俺が持つから。」
私の頭をポンっとして、重ねてあった二種類の紙にもう一種類を重ねて彼は歩き出した。
えっ…って!
も、もしかして気を使ってくれた…?
「ここは男にかっこつけさせてあげろよ、市岡。ほら、さっさと行きな」
先生の言ったことにハテナが浮かんだが、とりあえずホッチキスを二つ持って私は教室に向かった。