コイのヤマイ
由紀先輩は、周りを見ていないようでちゃんと見ている。
図書室で一緒にお弁当を食べた時も、あたしの野菜しか入っていないお弁当箱を見て絶句していた。
炭水化物もお肉も食べられない。……魚や汁物は辛うじて食べられるけども。
――胃が受け付けないんだ。
だからいつもは、兄が無理矢理押し付けてくるサプリメントで栄養を補っている。
……でも、その翌週のお弁当には、お肉もご飯も入っていて。
表情には出さず、バランスの取れたソレを無理して食べるあたしに「残せばいいじゃないですか」と、一言。
でも、ソレは珍しく機嫌の良いお母さんが作ってくれたモノで。
これを残して帰ったらお母さんの機嫌を悪くしてしまうだろうと……、その考えはなかった。
――お母さんは、あたしのスキキライを把握していない。