コイのヤマイ
「そんなんだから折れそうな程細いんです」
そう言い、先輩はあたしのお弁当箱を奪い、“あーん”を促した。
「……」
えっえっ間接キス……!
先輩の箸で摘みあげられたからあげが、あたしの口許まで運ばれ「少しは食べないと身体に悪いですよ」と。
ドキドキと胸を鳴らし、小さく口を開けば、先輩の箸に摘まれるからあげが口の中へ放り込まれる。
「――犬に餌付けしてる気分ですね」
そう言い、莞爾として微笑んだ。
――……先輩は優しい。
その優しさが例え残酷なモノでも、あたしには嬉しかったし温かかった。