コイのヤマイ


「そんなんだから折れそうな程細いんです」


そう言い、先輩はあたしのお弁当箱を奪い、“あーん”を促した。



「……」


えっえっ間接キス……!


先輩の箸で摘みあげられたからあげが、あたしの口許まで運ばれ「少しは食べないと身体に悪いですよ」と。


ドキドキと胸を鳴らし、小さく口を開けば、先輩の箸に摘まれるからあげが口の中へ放り込まれる。



「――犬に餌付けしてる気分ですね」


そう言い、莞爾として微笑んだ。




――……先輩は優しい。


その優しさが例え残酷なモノでも、あたしには嬉しかったし温かかった。


< 11 / 15 >

この作品をシェア

pagetop