コイのヤマイ
「志帆! 飯食ってんのか!? また難しそうな本ばっかり読みやがって!」
「食べてる食べてる。うるさいから帰って。怒られる」
あの人達が居る空間で、こんな大きな音を立てたら怒られるどころではない。
――きっと追い出される。
「追い出されたら俺のとこ来い!!」
「カップルが同棲している部屋に何か行くワケないじゃん。裏切り者」
「うっ……その件は本当に本当に申し訳ないけど…! でもほら! 愛美も志帆の事気に入ってるし!」
「いい。静かにしてれば何も言われないし」
「……そっか」
しゅんと耳を下げ項垂れる天。
天はこの家を出れて万々歳だろうに、何故かたまぁに帰って来る。
あたしなら、この家を一度でも出ればもう二度と帰りたいとは思わないだろう。