コイのヤマイ


「で、用事は?」


「ああ! 愛美〈マナミ〉が温野菜と湯豆腐作ってくれたからお裾分け!」


そう、渡された紙袋はほんのり温かくて、愛美さんの愛情に触れたみたいで照れ臭い気持ちになる。

あたしの食べられるモノばかり……。




「ありがとう……」

「もうすぐ夏何だからしっかり水分摂れよ! 後、何かあったら連絡すること!」



返事をする前にバタンッとしまった扉に苦笑を零す。

本当、嵐のような男だ。



あたしがキッチンへ行かなくてもいいように、箸も取り皿も入った紙袋から湯豆腐を取り出し、ポン酢につけて食べる。



――……丁度いい温かさに、胸が苦しくなった。


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