コイのヤマイ
先輩の顔を見つめてみる。
ニキビ一つ無い真っ白な綺麗な肌。
筋の通った高い鼻には銀縁のメガネ。
メガネの奥には切れ長の瞳。
そうして細長い指でメガネをくいっと持ち上げチラリ、あたしを一瞥する。
視線を読んでいた本に戻し、「見てんじゃねえよクソブス」表情一つ崩す事なく、綺麗なテノールボイスであたしを罵った。
つ、つまり、それって……
「ハアハアッ……そ、それはまさか…‥あたしに見つめられる事により緊張して読書が捗らないと!?!?」
「違います」
せ、先輩があたしを意識しているとは!!
興奮して荒くなる鼻息何か気にしている暇はなく、ぐいっと先輩へと詰め寄る。
「ハアハアハァ先輩、好きです首筋舐めてもハアいいですか!!」
「そこの窓から飛び降りてくれますか」
「はっ! それってハア心中でフガッンン!!」
心中ですか!! と、聞こうとしたその声は、先輩の綺麗な手のひらにより阻止された。
「黙れよ変態」
普段丁寧な言葉遣いの先輩が、本当に鬱陶しくなった時、毒舌になる。
「そ、そんな先輩も好きです!!」
「死んで?」
そんな言葉と共に悩殺スマイルを向けられ、あたしの意識は途切れた――……。