コイのヤマイ


「安否を確認したので帰ります」


「あっハイ! ありがとうございました! お気をつけて!」


少しだけ目尻を下げた先輩は、あたしの顔を一瞥して去って行った。


おおお! 立ち姿まで美しいとは!

背筋をビシッと伸ばし、凛として歩く先輩は誰が見ても眉目秀麗だと思う。


決して、あたしだけにそう見えている訳ではない。恋愛フィルターでもない。



ただ、由紀先輩は寡黙な人だから、皆話しかけづらいんだろう。

――寡黙で、秘密主義者だから。


現に、由紀先輩はあたしに自分の話をした事はない。



あたしが、「今日はお弁当忘れたので食堂何です!」と、言っても「へえ、そうなんですか」と、返すだけ。


普通の高校生なら話を弾ませる為に「へえ、食堂なんだ! 私はお弁当だよ〜」くらいは言うと思う。

……まあこれは女子の場合だけど。




………うーん、でも。

由紀先輩がお喋りだったら何か違うなあ。


あ、ただあたしに興味が無いとか? あれ、そうなの?

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