不器用な彼が隠した2文字




「…悪い、急用できたから帰る」






「あ…はいっ!」



私も慌てて残りのアイスを口に詰め込み、荷物を持って立ち上がった。




「ごめんな、急に」




朝比奈先輩は、財布を取り出して私の手に500円玉を押し付ける。


「え…」



「女の、しかも後輩に払わせるわけにはいかないだろ」





それだけ言って、じゃあまたな、と背を向けた朝比奈先輩。





「あの、何か…あったんですか?」


「あー、ちょっとな」






それだけ言って、お店から出てしまった。


その背中に、何も言えなくて。





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