不器用な彼が隠した2文字
誰からの、電話だったんだろう。
手元の500円玉を見て、俯く。
私がお礼するって言ったのに、だから私が払わなきゃ意味ないのに。
「…」
まあ、急用なら仕方ないよね。
アイスだって食べ終わったし、どっちにしろもう帰ることになってただろうし。
そう自分に言い聞かせて、お店を出た。
メールを見た瞬間の、少し苦しそうな表情が忘れられない。
きっと朝比奈先輩には、私が知らないことがたくさんあるんだろうな。
きっと、私が知ってる朝比奈先輩は、彼のほんの一部で。
そう思うとなんだか、夕方の風がやけに冷たくて寂しくなった。